
2025年4月9日より、米国のドナルド・トランプ大統領が発令した「相互関税(Reciprocal Tariffs)」制度が施行されます。この政策では、各国から米国に輸入される商品に対し、一律の関税が適用されます。この影響を受ける国々の中で、フィリピンは比較的低い関税率が設定されており、競争力を維持できると考えられています。
フィリピンの関税率はASEAN諸国の中で比較的低水準

今回の関税制度による米国向け輸出品への関税率を見ると、フィリピンには17%の関税が課されることが決定しました。この数値は、ASEAN諸国の中ではシンガポール(10%)に次いで2番目に低い水準です。一方、カンボジア(49%)、ラオス(48%)、ベトナム(46%)、ミャンマー(46%)、タイ(36%)、インドネシア(32%)、マレーシア(24%)といった国々では、フィリピンよりも高い関税率が設定されています。
また、アジア諸国全体で見ても、日本(24%)、韓国(25%)、台湾(32%)、インド(26%)、中国(34%)と比較して、フィリピンの関税率は低めに抑えられています。このため、フィリピンの輸出業界は、他の競争国と比べて米国市場での競争力が向上する可能性があると見られています。
フィリピン政府の見解と対応策

フィリピンのマリア・クリスティナ・ロケ貿易産業相は、この関税制度について「フィリピンと米国との経済関係を強化する戦略的なチャンスである」と述べました。フィリピンは米国向け主要輸出国の中で影響が比較的少なく、周辺諸国との差別化が可能になると考えられています。
また、ラルフ・レクト財務相は、フィリピン経済は国内需要によって支えられているため、貿易摩擦による影響は限定的であるとしつつも、供給網の混乱、高金利、インフレ上昇による世界経済の減速が懸念されると指摘しています。こうした状況を踏まえ、フィリピン政府は「CREATE MORE法(経済再活性化の機会を最大限に活用するための企業再生・税制優遇措置)」を活用し、海外企業の進出を促して投資環境を強化する方針を示しました。
さらに、関税が比較的低いことを活かし、自由貿易協定(FTA)の締結にも積極的に取り組むことで、国際貿易の活性化を目指していく方針が示されました。
関税制度による懸念事項
一方で、これまで無関税または低関税だった商品にも一律17%の関税が課されるため、価格競争力の低下、企業の収益減少、雇用縮小などの懸念があります。特に、農産物や食品といった農業関連の輸出品は今回の関税免除の対象外となっており、フィリピン貿易産業省(DTI)は現時点でその影響の詳細を精査している状況です。
ただし、銅鉱石や集積回路などの特定の輸出品については、新関税の適用対象外となっており、これらの分野に関しては影響が限定的となる見込みです。
今後の展望

フィリピンの相対的に低い関税率は、海外投資家にとって新たなチャンスを提供する可能性があります。特に、米国向け輸出品の競争力が維持されることで、フィリピン経済が安定し、外資系企業の進出が加速することが予想されます。これに伴い、製造業や流通業、インフラ関連の投資需要も増加するため、フィリピン市場における資産運用の選択肢が広がることになります。
また、米国との貿易関係が強化されることで、フィリピンの金融市場にも影響があると考えられます。外資誘致の活発化により、株式市場や不動産市場における投資機会が拡大することが見込まれるため、長期的な資産形成を考えている投資家にとって、有望な市場の一つとなる可能性があります。
さらに、フィリピン政府が自由貿易協定(FTA)に積極的に取り組んでいることも注目すべきポイントです。これにより、今後の経済成長の基盤がより強固となり、安定した投資環境が形成されることが期待されます。特に、ASEAN諸国やEU、UAE、カナダなどとの貿易協定が進展することで、国際的な資本流入が増加し、分散投資の観点からもフィリピン市場の魅力が増すでしょう。
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G.I.Sコンテンツ担当 鎌倉