国によって異なる文化や習慣のひとつに、私たち日本人には理解し難く、旅行や留学で海外に渡航した際に悩みの種となるのが「チップ」ではないでしょうか。そもそもチップとは、受けたサービスに対して感謝の気持ちを示す心づけのようなものですが、日本ではサービス料も込みの価格となっている事がほとんどですよね。海外ではチップを給与の一部として扱うという考え方もあり、サービスへの対価を支払っているという認識のもと、チップを渡しています。チップの習慣は、特にカナダ・アメリカのような北アメリカや、ヨーロッパ、中東の地域に多く見られるようです。
カナダでのチップ事情
私はカナダのブリティッシュ・コロンビア州に2年弱在住していました。その間生計を立てるべく、昼は ※1プーティン専門店で働き、夜はバンクーバー・ダウンタウンの中心部にあるレストランのホール兼バーテンダーをしていました。昼働いていたプーティン専門店はファーストフード店なのでセルフサービスでした。それ故にお客様からのチップはほとんどありませんでした。レジ横に瓶が置いてあり、そこにお釣りで貰った細かいコインなどをチップとしてお客様が入れてくれるという程度なので、月に一度その瓶からチップを出し、従業員全員で割るというシステムでした。
しかし、夜働いていたレストランでは忙しい週末の夜にシフトに入ろうものならば、一晩で日本円にすると1万円~2万円程のチップを貰う事が出来ました。私の働いていたレストランでのチップはお会計時に頂く、合計金額➕チップ分はもちろんの事、個人的に渡されたチップでも一度全てレジに入れ、閉店後にその日の売り上げを出すと同時に、チップ収入分も出し、そのチップをその日働いていた人数で割ります。ただ均等に割るのではなく、従業員のレベルによってチップ率が変わり貰える額が変わるのです。入ったばかりの頃は、出来る事が少ない為チップ率が低くあまり多くは貰えないのですが、私は3ヶ月経つ頃には、1番高いチップ率でその日のチップを貰う事が出来ていた為、給料はそのまま貯金をしてチップだけで生活をするという事が可能になりました。
※1カナダ発祥のフライドポテトに肉汁から作られたグレイビーソースとチーズをたっぷりかけた、ファーストフードのような料理です。1950年代にカナダのケベック州で誕生しました。店舗によってはステーキやハラペーニョなど様々なトッピングがあり、自分の好みで追加する事が出来ます。カナダでは至る所にプティーンを出す店舗があり、またコストコのフードコートのメニューにも必ずあるという程、国民的B級グルメといえるでしょう。
お酒を出すには資格が必要??
バンクーバーのあるブリティッシュ・コロンビア州でお酒を提供するポジションに従事する方は、法律により州認定の資格Serving It Right (SIR) を取得することが必須となります。この法律は2015年9月15日から施行が開始されておりまますが、同じ飲食業でも、アルコール提供のないカフェなどでは、Serving It Right (SIR) は必要ありません。しかし、私の働いていたレストランではアルコール類の提供を行っていて、バーテンダーやお酒をテーブルに運ぶにはこの資格が必要でした。なので、私はチップ率を上げたいが為に猛勉強をし取得しました。全て英語で出題される上に、ひっかけ問題もたくさんあり、私は2回落ち3度目の正直でやっと合格できました。当時はオンラインでの試験が可能で、私の記憶が確かならば1回25カナダドル程度で受験出来たと思います。最初は全く受かる気がしませんでしたが、数をこなしていくうちに何となくコツを掴み、何とか資格を取得出来ました。そのおかげで、バーカウンターのシフトにも入れる様になりチップ率も上がりました。
働きながらお酒が飲める??
私が働いていたレストランはよくお客様から、「アナタも好きな物飲んで!」と仲良くなったお客様からご馳走になる事が多々ありました。日本ではアルバイトが仕事中にお客様からお酒を頂き、談笑しながら飲むなんて考えられないですよね。でも私がボスから言われた事は、「仕事が出来ない位酔っ払わなければ全然飲んでいいよ。お客様と仲良くなってアナタと話したくて来たよ〜なんてなったら最高でしょ!だから自分が付いたテーブルのお客様やバーカウンター前に座ったお客様とはたくさん話なさい。英語が苦手でも大丈夫だから!」と言われ、お酒が好きな私としてはお給料をもらいながら、英語も覚えられて、さらにお酒も飲めるなんて最高過ぎる!!としか思えませんでした。笑 もちろん忙しい日はのんびり談笑しながらお酒を飲んで、なんて事は少し難しかったのですが、平日や暇な時間はゆったり楽しく働く事が出来ました。
カナダの給料日
日本では月に1回の給料日に自分の銀行口座に給与が振り込まれるというのがほとんどだと思いますが、カナダでは月に2回小切手でもらいました。私が働いていた場所が特別なのではなくこのスタイルが一般的な様です。私はそれまで小切手なんて貰った事がなかったので、これは一体どうしたらお金に変わるのだろうかと最初はとてもドキドキしたのですが、銀行のATMに小切手ごと入れればその金額が自分の口座に入るという仕組みだと分かり、それからは以前から小切手なんて当たり前の様に使っていましたよという顔をしてスッと銀行で入金していました。笑
前述した様に、このお給料の他にシフトに入る度に毎回チップを貰えるので、週3,4回の勤務で1ヶ月分の給料とチップとの合計でトータル月に40万円前後収入がありました。(当時、日本円で月に20万前後が給料で貰え、チップもほぼ同額貰えていました。)
ブリティッシュコロンビア州の最低賃金
私が住んでいたカナダ・ブリティッシュコロンビア州では、最低賃金が当時8.75カナダドルだったのですがその後年々上昇しており、現在は16.75カナダドルまで引き上がっています。そして更に今年6月には17.40カナダドルとなります。(カナダでは州によって賃金が異なります)この近年の流れからいずれチップ制度がなくなるのでは?とも言われていますが、まだ現在はチップを支払う慣習があるので、レストランのディナーであれば合計金額の10%~25%、相場としては15%程度支払えば失礼のない金額かと思います。
しかし、Angus Reidという調査会社によれば、着席スタイルの食事で20%以上の高額でチップを支払った人の割合は、2016年に8%だったのが、2023年には21%へと増加しているそうです。
そして14%以下の低額でチップを支払ったカナダ人の割合は、2016年に44%だったのが、2023年には23%へと減少しているようです。このように「チップフレーション」といって、チップの高騰がカナダでは社会問題にもなってきています。
カナダの銀行口座
カナダで働く場合はカナダの銀行口座が必要になります。また、タックスリターン(確定申告)でも銀行口座が必要な為、私も入国して必要な書類等が揃い次第すぐに作りました。日本では銀行口座を開設しても費用はかかりませんよね。しかし、カナダの銀行では口座を維持するのに毎月、口座維持費用がかかります。この金額を下回ると維持費用が発生するというプランだった為、決まった金額以上を(プランによって金額は異なります)必ず口座に入れておく必要がありました。働いていた時は全く問題のない額でしたが、帰国間近ともなると貯金していた給料はほぼ旅費へと消えてしまっていたので、残りは全て日本円に換え、口座を解約してから帰国しました。
タラレバの話、、、
昨今のこの円安状況を見る度に私が思う事はただ一つ、カナダの銀行口座をそのまま残してカナダドルを置いておくんだったなぁ〜…という後悔です。この時とばかりにカナダからあちこちへ旅行へ行き、ある程度の安定した収入があったが故に散財し、遊び呆けていました。もっと貯金をとっておけば良かったなぁ〜…なんて思うのですが、もう後の祭りですし、楽しかったのであれはあれで貴重な良い経験をしたのだ!と思う事にしています。笑
カナダで銀行口座を開設するにはパスポート・ビザ(学生ビザやワーキングホリデービザなど)・滞在先の住所が分かる書類(ホームステイの住所など)・カナダの電話番号、そしてSIN(カナダの社会保険番号)等々、様々な書類が必要になります。しかし、国によっては銀行口座開設のお手伝いをさせて頂く事が可能です。日本円以外に外貨でも資産を残しておきたいとお考えの方がいらっしゃいましたら、是非一度お気軽にお問合せ下さい。